睡眠時無呼吸症候群
睡眠時間は人間の一生の1/3から1/4を占め、起きている時の体の状態と密接な関係がありとても重要です。
1970年代に入って、Guilleminaultらは睡眠時無呼吸症候群(SAS)という概念を提唱しました。
「1時間あたりの無呼吸回数(AI)が5回以上、または無呼吸低呼吸指数(AHI)が10回以上」と定義されております。
※無呼吸:10秒以上鼻と口の気流が停止する
※低呼吸:呼吸の大きさが正常の50%以下になり酸素飽和度が3%以上低下する
睡眠時無呼吸症候群(SAS)を疑う症状としては以下が挙げられます
- 夜間の症状
習慣性のいびき、睡眠中の呼吸停止、寝相が悪い、夜間にトイレに起きる、夜間に目が覚める、寝汗 - 起きた時の症状
熟睡感がない、口が乾いている - 日中の症状
眠気がある、だるい、集中力がない
国民の4〜6%が睡眠時無呼吸症候群(SAS)であり、そのうち約半数(2~3%)が治療を要するといわれております。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の社会的な問題は日中の過度の眠気です。わが国でも2003年2月に山陽新幹線の運転士の居眠り運転のエピソードにより注目されました。実際に睡眠時無呼吸症候群(SAS)の患者は交通事故発生率が高いという報告があります。
●図1 SAS患者の交通事故発生率(5年間)
【文 献】
Findley, L. J., et al. (1988). “Automobile accidents involving patients with obstructive sleep apnea.” Am Rev
Respir Dis 138(2): 337-340.
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は以下に示すさまざまな合併症を引き起こします。
・高血圧
・脂質異常症(高脂血症)
・糖尿病
・肥満
・肺高血圧症(心不全へ進展)
・脳血管障害
・精神障害(性格変化、抑うつ)
・性機能障害(勃起障害)
●図2 睡眠時無呼吸症候群患者の生命予後
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断・治療の流れ
※AHIは無呼吸指数(一時間あたりの10秒以上の気流の停止回数)と低呼吸指数(呼吸の大きさが半減し酸素飽和度が3%以上低下した回数)を合わせたもの
※専門機関での検査となります
CPAP(経鼻的持続気道陽圧療法)
睡眠中に鼻マスクを装着し、持続的に室内気を上気道に流入させ気道閉塞を予防する治療法で1984年にSullivanにより開発されました。我が国には治療が必要なSAS患者が200万人存在すると推測されておりますが、CPAPの普及はまだ少ないのが現状です。中等症以上、50歳未満の症例では特に生命予後が短く、持続陽圧呼吸療法(CPAP)が明らかに予後を改善した(1)ことが示されており、最近の研究ではCPAPがSAS患者の血管内皮機能を改善させる(2)ことも示唆されております。
月一回の外来治療をしていただき、保険適応で3割負担なら5,000円程度、1割負担なら2,000円程度となります。
その他の治療としては口腔内装置(マウスピース)、耳鼻科的外科治療がありますが個々の症状に合わせて選択していきます。
文献
1.He, J., et al. (1988). “Mortality and apnea index in obstructive sleep apnea. Experience in 385 male patients.” Chest 94(1): 9-14.
2.Kohler, M., et al. (2013). “CPAP improves endothelial function in minimally symptomatic OSA patients: results from a subset study of the MOSAIC trial.” Chest.